大学3年生になる前。

春休みだったように思う。

夏休みと同じくらい長い休みで、今思えばもったいないくらい

時間が有り余っていた。


この時期に引越を考えた。

もっと学校に近い場所にしようと。

最初の家から学校までは1時間程かかってしまう。

交通費もかかってくるし、通学の時間もできるだけ短くしたかった。

家から出る時間が早いというのは、朝の時間があまり取れず余裕がない。

デメリットが多い気もするが、私にとっては実際そんなこともなく、メリットと思っていることもあった。

秋から冬にかけての朝早い時間は朝日がまだ低く、街がキレイに洗われていくようで気持ちが良い。

その時間にしか見れない街の風景が見れるのだ。

電車での通学は、読書の時間にあてられる。

座れることはそれほどなかった気がするが、この時間があったから本を読むことができた気もする。


しかし、朝早いのはあまり得意ではないので、朝の授業の単位を落とす危険性を出来るだけ少なくするためにも

家は近いほうが良かった。

 

そして選んだ2軒目の住まいは、学校から徒歩でも15分程度のところにある、

鉄筋コンクリート3階建てのワンルームマンション。

この頃はまだ鉄筋コンクリートがどういうものかよくわかっておらず、

木造よりしっかりしているものくらいにしか思っていなかった。

 

初めての不動産屋さんでの住まいの相談のときは、自分でもどんな住まいを求めているのかもわからず、

不動産屋さんを困らせてしまった記憶がある。

この時に私が知っていたというか、理解していたのはせいぜいそのマンションがどこにあるのか、

そして、家賃はいくらなのかくらいなもので、設備的なものについては全然無知だった。


2~3軒回ってようやく選んだこのマンション。

特に不満はなかったというわけではないが、住んでみて初めてそういうものに気がついた。

ワンルームなので収納が少ない。

不動産屋さんと来た時はものが何もないので広く見えるが、実際家具を置くとそんなに広くはない。

家具等はそんなに持っていなかったので、そこまで困りはしなかったが、

増やすのもためらいがあったように思う。

 

ここでは初めて結露を体験した。

木造住宅のときもあるにはあったのだが、鉄筋コンクリートの部屋ではその量が比にならない。

西側にベランダ、北側にもFIX窓があったが、北側窓の結露が特にひどく、

部屋の中で少しカビ臭い匂いがしてきて気がついた。

窓の側においてあった本やダンボールの箱がフニャフニャになっていて、何処かから水が漏れているのかと初めは心配した。


その頃に換気の大切さというものを感じた。

別に特別なことをするわけではなく、少しの間窓を開けておくだけで

結露が全然しなくなった。

冷たい空気が入ってくるのは寒い時期なので避けたいところだが、ずっと温かい空気に浸っていると

自分自身が腐っていってしまうようなそんな気分さえ湧いてくる。

たまには冷たい空気にふれて心身ともに引き締める時間があっても良いのかもしれない。


結露以外で困ったことはとくに記憶していない。

部屋から玄関へ行くまでの廊下にドアが有り、プライバシー的には良かったのだが、

それほど大きくないので、荷物を持っての出入りがちょっと面倒だと思ったことくらい。


ここでは大学生の後半2年間と、社会人1年目の合計3年間をすごした。

思考と実験の場

生まれた時からあって、何の疑問もなく暮らしてきた家。

家、生活、暮らし。ごく当たり前だったものを、住環境が変わったことで改めて考えるキッカケができました。

今までと同じ暮らし方をしていたら、そのまま過ごしていたと思います。

生活の中心となる家。暮らすとはどういうことなのか。生きること、その哲学とは。